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「N響マロさんの語るクラシック音楽史」に行ってきた

昨日はこれに行ってきた♪


NHK交響楽団のコンサートマスター マロさん(篠崎史紀さん)の講義に行ってきました。

なにかに参加したいと思って検索してる中で、見つけた
「N響マロさん ヴァイオリン名曲300年の旅」というNHKのカルチャセンターで行われるという講座。

NHK交響楽団コンサートマスターのマロさんが選んだ名曲で、クラシック300年史をご案内します。お話しと演奏でお楽しみいただく贅沢な90分!

ってことで、おもしろそうじゃないですか。

場所は名古屋栄のNHKビル。
むかーし、学生のころNHK名古屋青少年交響楽団に入ってた時の練習場所であり、ほんのちょっとだけここのオフィスで研修的なことをしたことがあるほんのり思い出がある場所の21階。

練習室のような広い場所に椅子を並べて、前方でマロさんがおしゃべりしながら演奏する。そんな贅沢な講義。

300年通史ということで、
ヘンデルのあたりからマーラーあたりまでを
時代の流れの中で、その時々の時代背景や作曲家のエピソードを織り交ぜながら解説してくださいました。

自分の記憶の定着のために記事にまとめました。
マロさんの生演奏で聴いた曲もyoutubeから拾ってきて貼ってありますので、そちらもよければぜひあわせてお聞きください。

クラシック音楽のはじまり

クラシックの最初といえばだいたいヘンデルからですよね。
ヘンデル バイオリンソナタ4番 第一楽章・第二楽章
の演奏から幕開けでした。

目の前で聞くN響コンマスの生演奏。
クラシックコンサートに行くと寝てしまう私でも(ダメじゃん😂)、さすがに聴き入りました。

伝統的な形式で行われるクラシックコンサートももちろんいいけど、「親子でクラシック」的なイベントでイメージされる、おしゃべりして演奏しておしゃべりして演奏して。っていう形ももっと増えていくといいなと思いますね。

その方がとっつきやすいんだもん。
一般的にクラシック知ってるほうの私だって(← 一般的にね。全日本人の平均値からするとちょっと知ってる方っていう意味でね(笑))
やっぱり今回みたいに解説があって、演奏があってっていうほうが聞いてて楽しいんだもん。
そういう形式の演奏会はもっと増えていくといいですね。
(もちろん今でも十分あるんでしょうけどね。私が足を運んでないだけですね)

モーツァルトの素が現れる短調の曲

そしてヘンデルの次はハイドンの解説があって、
2曲目の演奏がモーツァルト。

モーツァルトは明るい曲が多いんですよね。
なぜかっていうと、貴族がそういう曲を望んだから。
でも、彼はたまーに暗い曲を書くんです。
短調の曲を書いたときはモーツァルトの素が出ている。
お母さんが死んじゃって悲しくてたまらないっていう時に書いた曲
古典にしては珍しいくらい感情的な曲

マロさん談

という解説の後に演奏したのがこの曲。
モーツァルト ヴァイオリンソナタK.304 第二楽章

モーツァルトって本当にキラキラ明るい貴族のBGMって曲がくると思ってたから、「悲しくて悲しくてたまらない」っていうメロディーを奏でられて胸にグッとくるものがありました。

音楽を芸術に格上げしたベートーヴェン 

そしてモーツァルトの次はベートーヴェンですよね。
音楽召使の時代から、音楽家は芸術家だっていう地位を確立したベートーヴェンのお話に入ります。

それまでの音楽家は貴族に依頼されて作曲をしていたけど
ベートーヴェンは自分が作りたい曲を作って、それを買ってもらっていた。
売れなかったのは、交響曲第8番だけ。
これは売れなかったのか、売らなかったのか。
8番はつまらなかったから売れなかったんだっていう説が言われがちだけど
僕はそうは思わない。ちょうど「不滅の恋人」の時代の曲だから、彼が大事な人のために書いた曲だから…とかだといいなぁ、なんて思ってます。

マロさん談

なんて、話を聞いたら8番が聴きたくなりますよね(笑)
帰りの電車で、聞いて帰りましたよ。
現代って便利ですよね。YouTubeで探せば一発で出てきてすぐ聴けるんですもん。
私が現役だった頃は、「へえ、どういう曲なんだろう」って思ったらCDショップ行かないといけなかったんですから。
便利な世の中になったもんです。(しみじみ年寄り臭いことを言うw)

そんなベートーヴェンからは可愛らしいメヌエットを聴かせてくれました。

子供の練習曲のイメージが強い曲だからですかね。
マロさんが弾くと厚みがすごいな😳
って感じでした。

指揮者とかが「もっと豊かな音出して」って言われる時、こういう音のことをイメージしてるんだろうなっていうお手本のような音を聞いた気持ちになりました。

本当はロマンチックなブラームス


そして古典の次の時代はロマン派ですね。

メンデルスゾーン、シューベルト、ブラームスの話をして
演奏した曲はブラームス。
ロマンティックでありながらスパイスが効いている。
ちょっと不思議なところを入れる。
それがブラームスのおいしいところだったりする。
ブラームスはベートーヴェンの呪縛から抜けられない。大好きなんですね。ベートーヴェンの呪縛に絡まりながら、師匠であるシューマンの影響も受けて、すごくロマンティックな曲を作っている

マロさん談

一番幸せだった時代
交響曲3番を書いていた頃。
ヴァイオリンソナタ2番

「旋律のように」


私、ブラームスって「重い人」だと思ってたんですよね。
(なんか重厚感っていうか、ほら。そういう感じ)

ロマン派の中にあって、古典が好きだった人。っていうイメージ。
まあ、そりゃそういう人もいるよね。っていう感じだったんですが。

めちゃ甘というか、ロマンチックな曲書く人だったんですねー。

戦争が人間に及ぼす影響を音の調べからみる

新ウィーン楽派の話にも触れられていました。

このへん自分がまったく詳しくないので、
なんとなく理解している時代の話と、「うわぁ、あんまり好きじゃない時代の話だぁ」っていうのだと、歴然と言われてる話の理解度が落ちるのでそのわからなさが逆に面白かったです(笑)

学びって受け取り手の習熟度によるんだな、と。

まあとにかく、この辺の新ウィーン楽派の音が、最初は綺麗なんだけど、途中から気持ち悪くなる。っていう話は興味深かったです。

「これどこでおかしくなるのか、歴史を調べていくと、戦争を体験したあたりからおかしくなる」
戦争に行く前は綺麗に音を作っていたんだけど
戦争から帰ったあとから、ちょっと不思議な響きになる。

これなんでなんだろう、ってマロさんがウィーンに行った時に
第二次世界大戦を経験されているおじいさん先生に聞いたそうです。
そうしたら
「戦争って人間が人間じゃなくなるんだよ」って言われたそうです。
たとえば目の前に知らない人がいたら撃たないと撃たれる。
隣で友達が倒れたと思ったら、死んでる。
そういうのを体験すると音は不思議な響きを奏でるようになる。

そんなお話を聴かせてもらいました。
体験したことないけど、「戦争」ってそうなんでしょうね。
今当たり前にある「人間らしさ」っていうものがなくなってしまうんだろうなぁ。
絶対に体験したくない境地ですね。

それにしても、いつ戦争状態に巻き込まれてもおかしくないっていう世界情勢が、より実感を持って「体験したくない」と思わせているところが、本当に嫌な時代ですね。
「昔はそんなことがあったんだね。戦争なんて二度としないように勉強していかなきゃねー」っていう子供の頃の響きとは違う響きを持っているんですよね。

続けてマロさんは「大雑把に分けると作曲家は4種類に分けられる」と
次のように分類されていました。

①宗教音楽を作った人
②オペラや歌曲を作った人
③交響曲を作った人
④自分の楽器を紹介する曲を作った人

④の代表的な人は
リスト、ショパン、パガニーニ、そしてクライスラー

クライスラーはユダヤ人だったので、大戦中の迫害を逃れるためにアメリカに渡って、アメリカでブラームスのヴァイオリンコンツェルトを世界中に広げた人です。

そんなクライスラーの踊る人形という曲を聴かせてくれました。

自国の安全が脅かされてナショナリズムが生まれる時代の音楽

そして20世紀に入って、国民楽派の音楽になっていきます。

有名どころではスメタナのわが祖国ですね。

チェコは当時オーストリアに占領されていた。
占領されていると、言語も宗教も風習も取り上げられてしまう。
そんな中でチェコの人は自分たちを取り戻さないといけない。
という中でスメタナはモルダウに代表されるスラブの曲を作っていきました。

そして、美術でいうとミュシャ
ミュシャはスラヴ抒情詩という超大作を残しています。

マロさん談

絵画美術には疎くて。
ミュシャがチェコの人っていうのも今回初めて知りました。

スラヴ抒情詩はチェコおよびスラヴ民族の伝承および歴史を題材としており、太古の時代から1918年のチェコ独立までを描いているそうです。

スラヴの歴史の神格化


そして現代音楽のくくりで聴かせてくださったのが
マーラー 交響曲第5番 アダージェット

オーケストラで弾く曲をマロさんのバイオリン一本とピアノ伴奏だけで聴くっていうのもなかなかない貴重な時間でした。

この曲は「ベニスに死す」のテーマ曲。
コロナ禍の現代と重ね合わせて選曲したとのことでしたー。

いやいや、90分の濃密な時間でした。
ざくっと300年解説してもらったあと、最後に原点に戻って
バッハをお弟子さん(名フィル団員:さん)と演奏してくださいました。

見えざるものとの対話の手段だった音楽

N響のコンマスの生演奏を聴きながら300年の歴史を振り返るという本当に贅沢な時間でした。

この90分の中でも序盤の方のお話がとても印象的でした。

「こんなことを言うとマロはおかしくなったんじゃないかと言われそうだけど」と前置きをして仰った内容が

音楽は見えないものと交信するために書かれたのではないかと思っている。神と交信するための手段。
だったのではないかと思わせるところが多い。

という言葉でした。

不思議な力を持つ数字:3

3っていうのは昔から力のある数字だと言われている。

3っていう数字は、人間のどこかに完全に埋め込まれていると感じる。
大事な数字。

たとえば西洋だと「父と子と精霊」とか三位一体とか
イエスキリストが生まれた時に三人の博士がやってきたりとか
イエスキリストが最後の晩餐の時にペテロに「朝までに三度私を知らないと言うだろう」とか
イエスキリストが磔にされた後、3日後に復活するとか

日本だと
「2度あることは3度ある」とか
「仏の顔も三度まで」とか

現在・過去・未来
朝・昼・晩

とか、音楽でも3回同じことを繰り返したら、3度目はなにか違うことが起こる。3つめで完成系が出てくる。

「3っていう数字が出てきた時に僕たち演奏家は何かをやらなくちゃいけない」

っていうのはヘンデルの時代にはもう完全に作られていた。

不思議な力を持つ数字:4 との融合

それと4の数字も意味がある。
春夏秋冬
東西南北

7の力 (3+4=7)

で、3と4を足すと7になる。
一週間とか7だよね。
月火水木金土日

って、言って
ピアノ伴奏者の方に白鍵を鳴らしてもらうんですよ。

7!なんですね。

12の力 (3×4=12)

で、3と4をかけると12なんですね。
1ダースは12
1年は12ヶ月
干支も12

黒鍵も含むドからシは12なんですね!

音楽と数学は密接に関わっているなんて話はよく聞きますが。
聞くだけでその真髄まで理解しようとしたことはありませんが(笑)

すごく興味深い話でした。

ピタゴラスの「宇宙が音楽を奏でている」的な名言を思い出した瞬間でした。

ピタゴラスは、「ものが動くと音がする。天体も実は動くときに音を発しており、それらは調和する音程である。この音の調和が、宇宙の調和を生み出している。しかし我々の耳は貧弱なので、崇高な宇宙の調和を聞くことはできない」と主張しました。

↑この記事を書くにあたってググってみました(笑)

そんな文化的な一日を過ごせて、なんだか高尚な気分になりました。

オーケストラとか、歴史とか、神秘性とかそういうものが詰め合わせになってて、全部を通して私のツボな講座でした。

参加してよかった。

ありがとうございました。

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