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ドラマ「カルテット」感想と名言

作品紹介

ひょんな縁でであったアマチュア演奏家の30代の男女4人が、弦楽四重奏のカルテット「ドーナツホール」を結成する。
元プロ演奏家で現在は専業主婦の巻真紀(松たか子)、高名な音楽家を祖父に持ちサラリーマンをしている別府司(松田龍平)、路上演奏をするチェリストの世吹すずめ(満島ひかり)、フリーターの家森諭高(高橋一生)の4人は、それぞれ演奏家としての夢を諦めきれない者たちだった。
4人は司の祖父が所有する軽井沢の別荘で、週末を中心にひと冬の共同生活を送り、練習を重ね人前での演奏を目指す。

感想

会話劇の真骨頂です。

男女四人の過去の傷を紐解いていくストーリー展開もとてもおもしろいですが
日々の何気ない会話が、視聴者の心を指すヒューマンドラマです。

この4人の中でやっぱりとびぬけてキャラが立ってたのは家森さん(高橋一生)ですね。
名言で覚えてるのもやっぱり家森さんの印象。
すごいめんどくさい男ですけどねw

唐揚げレモンとか、謎の「サンキュー、パセリ」とか。
けっこう深いことも言ってるのにこういう「なに言ってるのか分からない」ことばが印象として残っていてとてもチャーミングな人物です。

脚本家坂元裕二さんの人間観察眼が光る作品です。
何度も見返したくなる、見るたびに味のするドラマです。

名言

このドラマは名言の宝庫です。

音楽で食べていきたいっていうけど、もう答え出てると思うんですよね。
わたしたち、好きなことで生きていけるひとにはなれなかったんです。
仕事にできなかった人は決めなきゃいけないと思うんです。
趣味にするのか、それでもまだ夢にするのか

たぶん視聴者はいわゆる「一般」の人たちで。
昔、子供のころはなりたかったなにかをどこかであきらめた人たちなんですよね。
もちろん私も。

こんなはずじゃなかった。
こんなふうにくすぶってる人生だとは思ってなかった。
まあ、そこそこ満足だけれど。
でも、この痛みはわからなくもないなぁ、と思う言葉ですよね。

音楽っていうのは
ドーナツの穴のようなもんだ。
何かが欠けているやつが奏でてるから、音楽になるんだよね。

私も学生時代クラシック音楽をやっていた人間なので
分かる気がします。

なにかが欠けてるやつが奏でてるから、音楽になる。

欠けてるから魅力的。
ま、欠けてない人間なんていないんですけどね。

行間。
好きな人には『好き』って言わずに、『会いたい』って言うでしょ。
会いたい人には『会いたい』って言わずに『ごはん行きません?』っていうでしょ
(中略)
言葉と気持ちは違うの
『こんなのデートじゃないんだからね』っていうのはデートでしょ。
『絶対怒らないからほんとのこと言って』って言われて、ほんとのこと言ったら
めっちゃ怒られるでしょ。
それが行間。
『連絡しますね』っていうのは、『連絡しないでね』っていう意味でしょ」

たしかカルテットの後だったと思うんですけど、カルテットの脚本家の坂元裕二さんが
プロフェッショナル~仕事の流儀~に出てらしたんです。
そこでこんなふうに言われていました。
「紙に「スキです」って書いても、「スキです」っていうのは伝わらないんですよね」
「スキの周りをどんどん塗りつぶしていくんです。周りを書くんです。これが脚本を書くっていう作業」
「小さい積み重ねで人間っていうのは描かれるものだから
僕にとっては大きな物語よりも、小さいしぐさで描かれている人物をテレビで見るほうがとても刺激的だなと思う」

まさにそのことをそのままセリフにした場面だなと思いますね。
たしかに、行間。
とくに日本人は「察する文化」「空気を読む文化」だから。
だからよくないっていう向きもあるとは思いますが、空気を読むことができるのは特殊能力ですよね。

そういう「小さい積み重ね」の中の決定打のような場面はナポリタンの場面ですよね。
私カルテットを見るまでケチャップ味のナポリタンあまり好きじゃなくて食べてなかったんですが、
カルテット後から好きになりましたもんね、単純(笑)

ナポリタン、危険です。
って白い服のすずめちゃんがナポリタンを食べようとしてた時に
自分のつけてるエプロンを外してすずめちゃんに着けてあげる、
そんな別府さんにすずめちゃんが「あ、こういうところ好きだな」って思う、それが視聴者にも伝わる。
そういうシーンを描けるのってすごいな、って単純に思いますね。

「告白は子供がするものですよ。大人は誘惑してください」
「誘惑はまず人間を捨てることです。だいたい三つパターンがあって、猫になるか、虎になるか、雨に濡れた犬になるか」
「キスしちゃったらダメですよ。いつキスしてもおかしくなぞ、の距離をつくるまでが女の仕事です。
ペットボトル一本分の距離を保ってください。女からキスしたら、男に恋は生まれません」

吉岡里穂ちゃん演じるアリスちゃんがまた、いい味出してましたよねぇ。
普通に嫌われそうな役なのに、人間味がない目が笑ってない感じも含めて魅力的でした。

「このまま、みんなと一緒にいたいんです。
死ぬならいまかなってぐらい、いまが好きです」
「ぼくはみなさんのちゃんとしてないところが好きなんです。
たとえ世界中から攻められたとしても、ぼくは全力でみんなを甘やかしますから」

恋愛感情もあるのだけど、
そんなものより深く「一緒に暮らす人」として絆が芽生えているこの4人をすてきだなぁ。
うらやましいなぁ、と思うそんな作品です。

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